和温療法とは
和温療法とは

 「和温療法」は「和む・温もり」療法で、全身を気持ちよく温める治療法です。この治療法は1989年に慢性心不全に対する「温熱療法」として開発しましたが、癌に対する高熱を用いた局所治療と区別して、温熱療法の意味を正しく理解していただくために、2007年(平成19年)3月に「温熱療法」から「和温療法」に名称を変更致しました。その後、「和温療法」は国内外で広く認知されるようになりました。「和温」は造語で、英語訳は「Waon Therapy」です。

「和温療法」は名称の通り、極めて安全で副作用のない優しい治療法です。特に、様々な難治性疾患で苦しんでおられる方々や、骨関節障害・脳血管障害などを合併して運動ができない方に有用です。これらの方々は一般に心地良い発汗の機会はありません。「和温療法」はこれらの方々に爽快な発汗をもたらし、気分・食欲・睡眠・便通を是正し、鬱気分を軽減させます。西洋医学でも東洋医学でも一般に治療法は患者さんに痛みや我慢を強いることはごく普通ですが、治療そのものが心地よい「和温療法」は、患者さんの顔色を良くし、笑顔を取り戻す、まさに「和む・温もり」療法といえます。

「和温療法」は「室内を均等の60℃に設定した遠赤外線乾式サウナ治療室で全身を15分間温めて、サウナ出浴後さらに30分間の安静保温を追加して、最後に発汗に見合う水分を補給する治療法」です。60℃・15分間の乾式サウナ浴で深部体温は0.8 ℃ ~1.2 ℃ (平均1.0 ℃)上昇します。この約1.0 ℃の深部体温の上昇は安全で副作用はなく治療効果を発揮します。「和温療法」は全身の血管機能を改善し、動脈・静脈を拡張させて全身の血管抵抗を低下させ、心臓に対する前負荷・後負荷を軽減し、その結果、心拍出量は増加して全身の血液循環を促進します。

「和温療法」には血管内皮機能の改善と血管新生作用があります。これらの作用と密接な関係がある一酸化窒素(NO)やヒートショック蛋白(生体防御機能を発揮するストレス応答蛋白)の発現を著明に増強します。すなわち「和温療法」は抗動脈硬化作用を有し、全身への血流を増加させて、各臓器の細胞に必要な栄養(酸素)を供給します。その結果、「和温療法」の臨床応用は極めて多彩で、多くの難治性疾患の治療・予防に効果を発揮します。

「和温療法」を開発して25年、これまで様々な臨床研究や基礎研究を通じて多くの事実を明らかにしてきました。従来の治療(薬物療法など)に抵抗性の難治性疾患、例えば心臓移植の適応となるような重症心不全のために退院できない難治性心不全、難治性潰瘍や疼痛で下肢切断の適応となる閉塞性動脈硬化症、原因不明の疲労で社会復帰ができない慢性疲労症候群、慢性疼痛や線維筋痛症などで長期間苦しんでおられる方々が、「和温療法」で驚くような回復を示した例をこれまで数多く経験してきました。薬物療法を含めたこれまで確立された様々な治療法に、「和温療法」を追加・組み合わせることで著明な治療効果が発揮されるのです。

医療の領域では臓器別診療が推進され、大学病院をはじめ総合病院はどこでも種々な臓器別診療科が開設され、診療は専門科ごとに行われています。これに対して、「和温療法」は臓器別治療法ではなく、全身の血管機能・血管新生を促進して、全身の血流を改善する治療法ですので、すべての臓器別診療科と連携できる治療法です。また、「和温療法」は中枢・末梢の自律神経や神経体液性因子(ホルモン活性)を是正し、自己免疫や生体防御機構を賦活化し、さらに心・精神を和ませ、心身をリフレッシュさせる全人的治療法です。従って、様々な難治性疾患に効果的だけでなく、それらの疾患の軽症な時から施行すれば各疾患の進行を抑制し、さらには原因疾患の予防や健康回復にも効果が期待できる治療法です。

「和温療法」は従来の治療法とは異なる革新的治療法です。日本は世界最長寿国で今後も超高齢化社会へ進むでしょう。高齢化社会で不可欠な医療は全人的医療です。国民のすべてが長生きして良かったと人生を閉じられる社会、人間としての人格を保ちながら人生の終焉を迎えられる社会は理想的です。そのような理想的な社会は「福寿社会」と呼べるでしょう。福寿社会の実現にはそれを支える「福寿医療」が必要です。平成24年7月、「第2次健康日本21」が提唱され、「健康長寿」は国策として推進されています。国民にとって健康長寿は大変すばらしいことですが、健康はいつか必ず損なわれて、「介護寿命」を経て人生は終わります。「介護寿命」を幸せに過ごしてこそ満足できる人生といえるでしょう。「和温療法」は健康寿命の促進だけでなく、介護寿命の充実にも貢献できます。介護の必要な高齢者や重症の病気の方々に「福音」をもたらす治療法で、まさに「福寿医療」ともいえます。

すなわち、「和温療法」は安全で対費用効果に優れ、患者を和ませ爽快な発汗を促す優しい包括的治療法です。従来の、患者に苦痛や我慢を伴う治療法と異なります。「和温療法」が21世紀の新しい治療法として、一日も早く一人でも多くの患者とその家族にとって真の福音となることを信じています。


※和温療法のロゴマーク及び「和温療法」「和温」「WAON THERAPY」の名称は登録商標です。
鄭 忠和 略歴
昭和48年3月
鹿児島大学医学部医学科卒業
昭和48年6月~49年3月
鹿児島大学病院臨床研修
昭和49年4月
鹿児島大学医学部内科学第一講座入局
昭和50年~昭和52年
東京大学医学部研究生(内科学第二講座)
昭和53年~昭和54年
鹿児島大学病院第一内科医員
昭和55年~昭和58年
米国Wadsworth VA Medical Center上級研究医
昭和57年~昭和58年
米国 UCLA 医学部Assistant Professor (講師)
昭和58年~63年
鹿児島大学医学部第一内科助教
平成元年~平成10年3月
鹿児島大学医学部講師(リハビリテーション科)
(平成6年~平成8年
米国 メーヨ・クリニックVisiting Scientist)
平成10年4月~15年3月
鹿児島大学医学部第一内科教授
平成15年4月~24年3月
鹿児島大学大学院 循環器・呼吸器・代謝内科教授
平成24年4月~現在
和温療法研究所所長、獨協医科大学特任教授
平成26年4月~現在
和温クリニック開設 (管理者就任)
現在、
  • 日本内科学会認定医
  • 日本循環器学会専門医
  • 日本心臓病学会上級心臓医
  • 日本超音波医学会指導医
  • 日本循環器学会名誉会員
  • 日本心臓病学会名誉会員
  • 日本心不全学会名誉会員
  • 日本心エコー図学会名誉会員
  • 米国心エコー図学会名誉会員
  • 韓国心エコー図学会名誉会員
  • 日本心臓リハビリテーション学会名誉会員
  • 日本内科学会功労会員
  • 日本超音波医学会功労会員
  • これまで日本心臓病学会、日本性差医学医療学会および
    アジア・太平洋心エコー・ドプラ会議の理事長を歴任
  • また、下記の学会の学術集会会長を歴任
      第13回日本心エコー図学会(2002年)
      第69回日本温泉気候物理医学会(2004年)
      第54回日本心臓病学会(2006年)
      第4回日本循環器心身医学会(2006年)
      第80回日本超音波医学会(2007年)
      第1回日本性差医学・医療学会(2008年)
      第16回日本心臓リハビリテーション学会(2010年)
      第15回日本心不全学会(2011年)
      第76回日本循環器学会(2012年)
      第16回アジア・太平洋心エコー・ドプラ会議(2012年)