和温療法は、患者に優しい全身的・全人的治療法で、心地よい発汗をもたらし心身をリラックスさせる非薬物療法です。全身の血管(毛細血管)内皮から一酸化窒素(NO)が著明に産生されて、血管内皮機能を改善します。その結果、全身の動脈・静脈は拡張し、心臓に対する前・後負荷は軽減し、1回拍出量・心拍出量は増加し全身の血液循環が促進され、体の隅々まで酸素と栄養が届けられます。また、リラクゼーション効果を発揮するので、交感神経活性は抑制され、副交感神経活性は亢進して、自律神経機能を是正し、神経体液性因子を改善します。一方、生体防御因子のヒートショック蛋白(HSP)の産生は亢進し、抗酸化作用をもたらすスーパーオキシドデイスムターゼ(SOD)の産生も亢進します。したがって、和温療法の継続は、抗動脈硬化作用を発揮して健康長寿に貢献します。

多彩な効果と臨床応用01


以上のような多彩な効果が発揮されることで、和温療法の臨床応用も多彩です。一番の特徴は、通常の治療法でなかなか治癒しない難治性疾患に著明な効果が発揮されることです。和温療法の治療効果が十分に得られている疾患は慢性心不全(重症例を含む)です。心臓移植の適応例(申請者)や、年齢が高齢のために心臓移植の適応ではない重症心不全例(Stage D)で、劇的な回復をされて自宅へ退院された方は少なくありません。閉塞性動脈硬化症、筋痛性脳脊髄炎 / 慢性疲労症候群などの難治性疾患に対する有効性も確実ですが、保険医療の承認を得るには前向き多施設臨床試験が必要です。現在、準備中です。

その他、各種疾患のリハビリテーションに和温療法を応用することは今後の重要な課題です。各種疾患の急性期や重症疾患、また骨関節障害・閉塞性肺疾患などの合併例、さらに高齢者のフレイルやサルコペニアなど、運動困難な方の包括的リハビリテーションに和温療法は最適です。また生活習慣病の予防にも有用です。